理性と感情の行方
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めちゃくちゃ面白かった 笑い堪えるのに必死だった 今泉監督作品を全て見たわけじゃないけど 今回も例に漏れず最高だった 恋愛の描き方がすごく心地いい 会話の中の所在なさとか、言葉にできないもやもやとか、すごく人間味が溢れている登場人物が愛おしい。 ここからは理性的に。 茂巳は妻の浮気を知りながら悲しみや怒りという感情が持てない自分にショック受ける。サイコパスにも見えるかもしれないけど、本人はいたって真面目に悩む。 自分にも他人にも正直すぎるんだと思う。 自分の中の感情に従うと好きというものがわからなくなってしまって、それを他者にも正直に言ってしまう素直さがある。 物の少ない部屋にシンプルな服装 無駄のない理性的に見える姿とは裏腹に、 馬鹿正直な言動がどこか子供っぽくもみえる。 だから、留亜はそんな茂巳に惹かれた。 1人だけまっすぐな茂巳が魅力的だったんだと思う。 ただ、感情の発生から決断までの帰結に無駄がないからある種の正しい答えしか見出せないし、冷めた人間にも見える。 茂巳は物語の書き手だったのかも。 ゲームマスターみたいに第三者視点でしか物事をはかれない。登場人物としての自分がない。 浮気の相談をしても他人がどう思うかが知りたくて、自分がどうしたいか見えない。妻がどうしたいのか浮気相手がどうしたいのか、それが自分の意思になり変わる。 自分のため、それも決して嘘じゃない でも妻の意思に従うことが自分の意思になってる。 人にはどう思うのか聞けるのに、 自分自身に同じ問いかけができない。 相談はたくさんされるのに相談できる人はいない。 茂巳は、とても矛盾した存在感に思える。 でも、何事もそう 競馬は嫌なのに馬肉は食べれるのと一緒で 自分の関与しない事象にはみな無頓着で 一度その矛盾に気づくと頭を悩ませる。 その問題も考えれば答えはきっと出るんだろうけど、 そこで悩んだり、葛藤したりするのが贅沢なんだと、 感情が無いことが貧しさで、感情の起伏が豊かさだと そう訴えかけてくるよう。 どこか幸が薄くて透けて見えるような 感情のない無機質な茂巳も人と出会って変化する。 どこか浮世離れした未成年の作家 俗世から離れた似た者同士の元テレビマン タクシードライバーのオモシロ滝田 勝手にライバル視してくる浮気相手の作家 見るからに子供っぽい留亜の彼氏 人に期待を寄せると失望すると言うが、それは言い換えれば自分が求めたものを返してくれる人が少ないということで、カワナベが言ったように茂巳は無意識に、悪意もなしに、人を見下していた。 人を信頼もしてないから裏切られることもない。 何もかも別世界の関係ない話だった。 自分自身さえも客観視した茂巳は 無駄がなく味気なく面白味がなかった。 だからこそ、 時間も金も同時になくなる無駄の極みとも思えるパチンコが"贅沢"という感覚を面白いと思った。 人の意見に流されやすい性格が功を奏する。 ニュートラルな存在だった茂巳が感情が動かしていく。 結婚している時は人の感情がわからない旦那に見えるけど、きっとそんなことはなくて、確かに愛情はあったんだと思う。じゃなきゃ義母の家に通ってケーキ食べるアルバムなんて普通作らない。妻も気づいてなかっただけで好きという気持ちはあったんだと思う。本人も自認してなかっただけで。 妻の紗衣やゆきのさんから見ればダメな旦那に見えたと思う。愛情を持たないおかしい旦那だと。でも客観的に見れば浮気もせず、小綺麗で社交性もあって、妻を気遣い、女性と夜を共にしても手を出さないいい男だった。 一方でマサは妻のゆきのと娘も大切にして家族サービスもする良き旦那である側、女優と浮気をして関係を切らない一次欲求に忠実な身体だけを求めるダメな男でもあった。 旦那としての存在と男としての存在、綺麗な対比。 表面的に見たらマサの方が幸せな家庭で 結果離婚した茂巳の方が不幸に見える。 でも、きっとどちらも幸せの形。 茂巳にとってはやはり小説が大切だったんだと思う。妻に浮気されても怒りがないのに留亜の小説には怒りを持てたし。 そんな大切な"小説を書くこと"を失ったことで夫婦の時間を手に入れていた。 何かを手放すことは何かを手に入れることだった。 妻の紗衣こそ、本当に好きだったのかな。 茂巳じゃなくて"小説を書いていた茂巳"がすきだったんじゃないかな、そしてそれを荒川に投影してたのかも。 2人がお互いを照らしあって存在しあってたはずなのに、お互いに自分の存在価値を疑い、想いはすれ違う。 書いたら過去になった荒川と違って 茂巳は小説を書かないことで 紗衣との時間を今にとどめていた。 だからヨコヅナの方が会いたいんだよね。 きっと。 チーズケーキが本来のパルフェだと思っていた時から、最後はパフェの気持ち悪さを受け入れられるようになってた姿は素敵に見えた。 男と女、恋愛と結婚、感情と理性、 随所で色々な2軸が対立軸として見え隠れして 構図としても捉えやすく展開も小気味良い。 interestingとfunnyが共存して cynicalとcomicalが混ざり合って とっても楽しくて豊かな映画だった。 ここからは感情的に。 稲垣吾郎×今泉力哉の破壊力たるや 若葉くんも顔つきから全然違ったなあ 大人の"私はわかってます"みたいな感覚嫌だったな 自分もあてはまる気がするからなおのこと 感情や欲求に素直な学生カップルに羨望 会話はどこ切り出しても軽妙で皮肉的で 特に浮気の相談するシーンはおもろすぎた どんな三者面談だよ笑 どのツラ下げて相談乗ってるんだよ笑 あと全然関係ないけど彼氏のその服なんだよ どこにポケットついてんだよ笑 もう本編と関係ないどうでもいいことも面白くなってた。 あー、面白かったなあ。 色々言葉を綴ったけど、批評したり分析したり考察したりしてないで、周りの顔色を伺いすぎないで、もっと欲求に素直になっていいんだと思えた。主観的に心の向くままに生きていいんだと肯定してもらえた気分。 正直であることが一番。 一般的にとか、正しいからとか、こうあるべきとか、そんなのは本当はどうでもよくて、自分がどうしたいのか ただ、それだけいいんだと思えた。 トランプしたあの夜を きっと留亜は小説にするんだろうなあ。 読みたいな、茂巳がモデルの小説。