累計発行部数100万部を突破した東野圭吾原作の同名小説を、阿部寛主演で映画化した『疾風ロンド』が11月26日より全国公開される。

疾風ロンド
©2016「疾風ロンド」製作委員会 ©東野圭吾/実業之日本社

「あまちゃん」の演出家・吉田照幸が監督を務めた本作は、日本最大級のスキー場を舞台に、医科学研究所から盗まれた違法生物兵器「K-55」を追う、スキー下手で頼りない中年研究員と仲間たちの奮闘を描くサスペンス・エンターテインメント。今回、コメディとサスペンスという正反対なジャンルを、爽快なスキーアクションとともに織り交ぜた吉田照幸監督に話を伺った。

──東野圭吾さんの数ある原作の中で、今回「疾風ロンド」を選んだ経緯を教えていただけますか?

吉田監督:映像化したいと思っていた時に、東映さんも考えてらっしゃって、お話をいただきました。それからはとんとん拍子に進んでいった感じです。コメディ要素とサスペンス要素があるというのが、新しい挑戦になるんじゃないかなと思いました。

疾風ロンド
©2016「疾風ロンド」製作委員会 ©東野圭吾/実業之日本社

──コメディとサスペンスのバランスをどのように考えていたのですか?

吉田監督:僕がコメディをやっていた経緯もあって、今回の組み合わせができました。僕の役割としては、コメディ要素を立たせることだと思うんです。サスペンスとしてガチンコでやってしまうと、もう犯人死んでますから、なかなか難しい面もあるわけです。基本的な物語の経緯がありながらも、スキー場にいる人たちそれぞれの人生を描いている。でも、その人生まで描いちゃうと、サスペンスを観に来た人たちが「全然サスペンスではないじゃない」ってなるわけです。そこをコメディというもので包むと、成立するんじゃないかなと思ったんです。つまり、緊張状態にあることと、笑いにあることというのは、ほとんど表裏一体なんですよ。悲劇と喜劇が表裏一体のように、悲劇をサスペンスとしてやっているけど、これをちょっと裏返すと喜劇になるんじゃないかと考えたんです。ですから、栗林(阿部寛)が苦労しているのを「かわいそう」と思わずに、みんな笑っているんですよ(笑)。「危険なものが埋まっている」って言ってるのに、この人の奮闘ぶりを見て笑っちゃうわけです。人の不幸っていうのは、強く言えば笑えるんです。でも結果的に、その人に「うまくいってほしい」って応援している気持ちもある。その結果、感情移入が促されて、人生を含めて観られるんです。こういうことって日本の映画にあまりないなと思ってやったんです。サスペンスならサスペンス、ドラマならドラマ、コメディならコメディに行っちゃう。この原作だと、謎解きと犯人が死んだっていう意外性がサスペンスにしてはわかりやすいから、しかもそこでプツッと切れてくれる。犯人が死んでいるからこそ、こちらの都合で動ける。後から思えば、「それでうまくいけたんだな」と思います。

──阿部寛さんを、緊張感を保ちつつコミカルな役どころに選んだポイントはどこだったのでしょうか?

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©2016「疾風ロンド」製作委員会 ©東野圭吾/実業之日本社

吉田監督:自分が脚本を書き直すときに、やはり阿部寛さんを想定して書いていたんです。なぜかというと、慌てると面白い人だから(笑)。阿部さんは大きいから、そもそも歩いているだけでなんか面白い。顔の表情も豊かなので、困っている顔とかがイメージしやすかったんですよね。昔、阿部さんがまだ売れていなかったときに出られていた舞台をテレビで観たんですが、ロッカールームの中でずっと騒いでいる演技が忘れられなくて(笑)。「あの慌てる阿部さんなら面白いんじゃないか」と思ったんです。

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吉田監督:阿部さんご自身もコメディを久しぶりにやりたかったみたいです。「どれくらいやったらいいか迷っている」という相談も受けました。要するに、「普通の人(研究員)なのにここまでやっていいのか」ということを悩まれていて。『トリック』みたいなキャラクターを与えられていたら、その中でやれると思うんです。しかも『トリック』とは違って、自分でワーッとやらなきゃいけなかったので、すごく新鮮だったみたいですね。

──スキー場での撮影が多かったと思いますが、自然を相手に苦労されたのでは?

吉田監督:よく聞かれるんですが、本当に苦労してないんですよね(笑)。ただただ楽しくて。よく考えてみたら、ずーっとスキー場にいるので、周りの方々(遊びに来ている方々)から楽しい空気が出てるんですよ。ですから、林の中に入っても、すぐゲレンデがあるので、なんか明るいトーンになっちゃうんです。そこに宿る空気も映像に出ちゃうんじゃないかと思いますね。「雪が降ってほしい」と思っていたシーンの撮影も、本当に雪が降ったんですよ。

──「阿部寛さんが来ると雪が降る」という“雪男”説は本当なんですか!?(笑)。

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吉田監督:阿部さんの撮影初日が豪雪で!本当は(その日の撮影は)晴れて欲しかったんです、それまでずっと晴れていたのに(笑)。それで本人は「エベレストより寒い」って言ってました。結果的な流れで見ると、「これ大変なところに来たな」という雰囲気が出ていて、雪が降って良かったなと思います。

──そんな阿部さん扮する栗林を手助けするパトロール隊員・根津を演じた大倉忠義さんについてお話を聞かせてください。「ジャニーズの良さを出して欲しい」と要求したそうですが?

吉田監督:非常にマイペースな方ですが、根津の家庭環境についてとか質問をされて、ちゃんと背景まで考えられている役者さんだなと感心しました。「ジャニーズの良さを出してくれ」という意図は、根津はただひたすらかっこいい役なんです。でも、ちょっと色気を出して芝居以外のものを足そうとすると、やっぱりキャラクターがぶれちゃうんですよね。かっこよくなきゃいけない理由は、栗林が言っている信じられないようなことを、一人信じちゃうんです。それで熱く探し始めるわけです。人を助けるために熱くなれる人って、かっこ良くないと説得力がないんですよね。今回の根津は、ある意味、役柄としては一辺倒なので、ジャニーズという持って生まれたスター性を出して欲しかった。振り向く芝居をいっぱいつけて、かっこよさを強調したところもありましたね。

──今回、ある出来事から大島優子さんとムロツヨシさんのアクションシーンがありますね。カメラワークも相当こだわりが伝わってきたのですが、何か教えていただけるところはありますか?

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疾風ロンド

吉田監督:あそこのチャンバラの雪上アクションを映像化することが、東野先生が「映像化不可能」と言われてきた大きな理由だと思うんです。スキーしながらチャンバラって普通無理なんですよ。でも、字で見ると想像できるので面白いんです。(そのシーンの)最後を、どうやって映像表現するか考えた時に『キングスマン』のスローモーション映像が思い浮かんで。中盤は、今までやってきたように撮れると思ったんですが、新しいアイデアが絶対必要だと思ったんです。進退極まった時に、いつの日か見た、スキー場を上から下まで降りているのをGoProで撮っている一般の人の映像が思い浮かんだんです。でもそれは、実際やってみないと勝算がわからないじゃないですか。実際やってもらったら、自分が滑っているような感覚になったんですよ…。いまデカいカメラじゃなくても、そういうカメラを使った映像がいっぱいあるじゃないですか。スキーでPOV(カメラの視線と登場人物の視線を一致させるようなカメラワーク)を使った人はいなかった。まさに観客と一体化した人が追いかけていくんです。感情移入してしまうので、みんな一緒になって滑っている感覚になるんですよ。アクションって、どんなにすごいものを作っても、もうみんなすごいのを観ちゃってるから、すぐ飽きてしまう。一つに感情移入して応援したりしていると、そうでもないアクションでもすごくドキドキしてくるんです。体感ということに対しては、やっぱり勝負賭けてました。クリストファー・ノーランが、あれだけお金を使っているのに、CGではなく出来るだけリアルに撮りたいという気持ちはわかる気がします。リアルなものって、人間の奥底に訴えかける何かがあるんじゃないかと思いますね。

──最後に公開を待つファンへメッセージをお願いします。

吉田監督:本当にサスペンスと笑いとドラマがぎゅうぎゅうに詰まった、贅沢な作品になっていると思います。観終わった後も爽やかな気持ちでご飯が美味しく食べられる映画なので、ぜひ劇場でご覧ください。ってラジオみたいですね(笑)。

映画『疾風ロンド』は11月26日より全国公開

【CREDIT】
原作:「疾風ロンド」東野圭吾(実業之日本社刊)

監督:吉田照幸
出演:阿部寛、大倉忠義、大島優子、ムロツヨシ、堀内敬子、戸次重幸、濱田龍臣、志尊淳、野間口徹、麻生祐未、生瀬勝久、柄本明

©2016「疾風ロンド」製作委員会 ©東野圭吾/実業之日本社

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