マーク・ウェブ監督『(500)日のサマー』から新作『gifted/ギフテッド』まで語る「人間の感情を描き続けたい」

映画『gifted/ギフテッド』のティーチインイベントが12日、都内・Apple 銀座にて行われ、監督のマーク・ウェブとミュージシャンのmito(クラムボン)が登壇した。

gifted/ギフテッド

大ヒット映画『(500)日のサマー』を手がけたマーク・ウェブ本人と、映画の劇伴も手掛ける音楽クリエイターmitoによるトークセッションということで会場は大盛況。大きな拍手に迎えられたマーク監督は「今日はこんなに素敵なイベントに呼んでくれてありがとう!この映画は観客の皆にただあたたかい気持ちになってもらいたいという一心で撮った作品なんだ。気に入ってもらえると嬉しいよ」と挨拶した。

(500)日のサマー』を制作する前はミュージックビデオを手掛けていたというマーク監督は「僕は10年間ミュージックビデオを撮っていたんだけど、そこでは最初に音楽を聴いて、どういった映像が合うんだろうという制作の仕方をしていたんだ。でも映画は後から音楽をつけるという真逆の作業だったから当時はすごく違和感を感じていたよ。『(500)日のサマー』ではまずサウンドトラックを作った。主人公のトムの思考や彼が何を考えているのかというのを基準に音楽を選んだから、それぞれの曲の歌詞はそのシーンやキャラクターたちの心情を説明していることが多いよ。僕にとっては楽しい作業だったね」と当時の撮影を振り返った。

gifted/ギフテッド

一方、mitoは「『(500)日のサマー』を観て僕がすごくショックだったのは、主人公のトムが好きな女の子の前でカラオケするシーンで、ピクシーズの「ヒア・カムズ・ユア・マン」を歌わせるところが凄くキャッチーで面白かったですね。あそこで綺麗にピクシーズを入れて、さらにエレベーターではスミスを入れるのは、本当にそのシーンに寄り添っていて良かったですね」と感銘を受けたこと明かした。

本作の音楽について問われたマーク監督は「この映画の舞台は、セントピーターズバーグっていうフロリダの街なんだけど、その街の質感を再現できる音楽をつけるように努力したよ。実は、キャット・スティーヴンスの「ザ・ウィンド」を最後まで入れるのを悩んだんだ。あまりにもありがちだなって。でもこの映画は、映画が好きな人にも、馴染みがない人たちにも気に入ってもらえるように作りたかったし、この曲ならメアリー(マッケナ・グレイス)だって好きになってくれるんじゃないかなって思っていれることに決めたよ」と語った。

gifted/ギフテッド

続いて話題が、本作で子役とは思えないほど圧倒的な存在感を醸し出しているマッケナ・グレイスに飛ぶと、マーク監督は「100人以上もの子たちとオーディションしたんだ。ある日部屋に入ってきたのがマッケナで、とても愉快な子だった。ホチキスを猫に見立てて遊んだりしてね。最後に、”泣き叫ぶシーンをやってもらおう”っていったら”5分ください”と言って部屋からいなくなったんだ。戻ってきたら、彼女はすでに出来上がっていて、感情を爆発させて大号泣してくれた。その時に”この子しかいない”と思ったよ。自分のなかにある大きな芯を、感情で表現することは大人でも難しい。まさに演技力でキフテッドがある子だと思う」と大絶賛した。

また、mitoも「マッケナちゃんは日本人受けする女の子ですよね。『アイ・アム・サム』のダコタ・ファニングに似たような才能を感じます。劇中の彼女の演技は完璧で、完璧だからこそこの映画に活きるんですよね。すでにインスタで注目を集めているし、素晴らしい子役だと思います」とコメント。するとマーク監督は「僕も彼女のインスタを見たよ。彼女の東京愛凄かったよね。」と先日まで来日していたマッケナの話題に、笑顔を見せた。

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また観客からの質問に答えるコーナーでは『(500)日のサマー』を50回見るほどファンです」と話す熱烈なファンに「時間」使った演出について尋ねられると「時間というものは人それぞれ認識の仕方が違う。映画は時間や記憶が描きやすい素晴らしいメディアだと思う。フラッシュバックしたり、時間を広げたり、 凝縮したりね。よく”時間が解決してくれる”っていうけど、時間軸とは関係なく、他の要素で変わっていくものだと思う。恋愛や愛情といった枠の中での時間では、時間を超えた普遍性が存在しているようにね。僕は時間より人間の感情に興味を持っていて、これからも描き続けたいと思っている」とマーク監督作品に通ずるテーマを語った。

続けて、『(500)日のサマー』のイケアデートのシーンが大好きと語った観客に「ご自身の作品なかで好きなシーンがあったら教えてください」と聞かれると「イケアデートのシーンはとても長くて、こんなシーン分かってもらえるのかなぁって不安に思っていたから、そう言ってもらえて嬉しいよ。僕にとってのお気に入りのシーンは『(500)日のサマー』のスプリットスクリーンのシーンだね。観ればとわかると思うけど、あのシーンは技術的にとても難しかったんだ。すべての過程が大変だったけど、すべてを丁寧に作りこむことで、完成したときにうまくブレンドされてやって良かったって充実感を得る事が出来た。ドアの開閉のタイミングや、音楽をかけたときのフィット感、すべてが最高だったよ」と満足気な表情を見せた。

gifted/ギフテッド

最後に、mitoが「監督の映画に触れて、どの世界でも日常的なことを、つぶさなことをエンターテイメントにできる人がいるんだなって知ることが出来て、とても勇気づけられました。監督とは、またなにか一緒に造れるといいな」と話し、マークは「今日は来てくれてありがとう!この映画は僕がシンプル に映画を作りたいという気持ちから制作したんだ。ただ楽しい気持ちで、素晴らしいスタッフとキャストで作った。だからこの映画を観て、みんなにも楽しんでほしい!」と笑顔で締め括った。イベント後は、観客へのサインや写真撮影にも快く対応し、イベントは和やかな雰囲気のなか幕を閉じた。

映画『gifted/ギフテッド』は11月23日(木・祝)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開

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