観客を魅了する演出力・原田眞人【監督・俳優のすすめ Vol.2】

“監督で観る” “俳優で観る”映画の楽しみ方。今注目の人やこれから注目すべき映画監督・俳優について紹介する【映画監督・俳優のすすめ】。Vol.2はこれまで数々の傑作を生み出してきた原田眞人監督。

原田眞人監督を知る
Keyword 1:異色の経歴〜ジャーナリストから映画監督へ

幼少期から映画が好きだった原田眞人監督。そのキャリアのスタートは映画監督ではなかった。ナショナル・フィルム・シアターに通いつめていたロンドン留学中の1972年、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ラスト・ショー』の批評がキネマ旬報に掲載されたことをきっかけに映画評論家デビュー(奇しくもピーター・ボグダノヴィッチ監督も、映画評論家から監督へと転身した経歴を持つ)。
その後は渡米し、滞在先のロサンゼルスで6年間、映画ジャーナリストとして活動。ハワード・ホークスやフランシス・フォード・コッポラらハリウッドの大物への取材を数多く行う。その間の経験や業界内の人脈などを活かし、自筆の脚本による『さらば映画の友よ インディアンサマー』で監督デビューを果たした。
原田眞人監督

Keyword 2:フィルモグラフィー 〜多彩なジャンルに共通する原田眞人流の演出

原田眞人監督のフィルモグラフィーを見ると多彩なジャンルの映画を手がけていることがわかる。『金融腐蝕列島 〔呪縛〕』『突入せよ!「あさま山荘」事件』『クライマーズ・ハイ』などの骨太な社会派ドラマ、『狗神』『伝染歌』などのホラー、『栄光と狂気』『魍魎の匣』『RETURN』などのエンタテイメント、『KAMIKAZE TAXI』『わが母の記』などの人間ドラマまで実に幅広い。

しかし、どの作品においても原田眞人監督ならではの演出が冴え渡っている。台詞の応酬により生まれる臨場感とダイナミックさ、硬派な社会派映画であっても釘付けにさせるエンタテイメント性、長年の映画体験で出会った過去の映画へのオマージュなど、観客を魅了する演出手腕に、観たあと誰もがきっと「面白い!」と唸らされる。

Keyword 3:日本映画界 〜新たな傑作を生み出し続け、日本映画界を牽引

これまでも様々な映画を手がけてきた原田眞人監督のフィルモグラディーにまた新たなジャンルが加わる。5月16日より公開の『駆込み女と駆出し男』である。原田眞人監督にとって初の時代劇となる本作は、時代劇でありながらも、まったく新しい時代劇となっている。井上ひさしが11年をかけた小説「東慶寺花だより」が原作。江戸時代に離婚をめぐって縁切寺に駆込んでくる女たちの、出会いと別れを繰り返しながら明るく生きる姿を描くとともに、人々の暮らしや時代の空気をも映し出した意欲作。大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、樹木希林、堤真一ら出演陣も超豪華。
「駆込み女と駆出し男」本ポスタ―

そして、8月8日には半藤一利氏のノンフィクション「日本のいちばん長い日 決定版」の映画化『日本のいちばん長い日』の公開も控えている。『わが母の記』『金融腐蝕列島 [呪縛]』などでタッグを組んできた役所広司主演のほか、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山﨑努らオールスターキャストが集結。「終戦前夜、日本で何が起こったのか」を、日本の平和を信じて戦った人々の壮絶な人間ドラマとともに描く歴史超大作。こちらも見逃せない。
「日本のいちばん長い日」第一弾ポスタービジュアル

自身の映画制作以外に、ワークショップを開催したり、大学で教授として講義を行ったりなど人材育成にも力を入れており、今までもこれからも日本映画界にかかせない一人である。


原田眞人
静岡県沼津市出身。ロンドンに留学後、1973年よりロサンゼルスを拠点に映画ジャーナリストとして活動。1979年に自筆の脚本による『さらば映画の友よ インディアンサマー』で監督デビュー。日航機墜落事故を追う新聞記者を描いた『クライマーズ・ハイ』は2008年日本アカデミー賞10部門で優秀賞を受賞。『わが母の記』はモントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリ受賞、日本アカデミー賞12部門で優秀賞を受賞。ハードボイルドからホラー、社会派、人間ドラマなど多彩なジャンルの映画を手がけている。

『駆込み女と駆出し男』
5月16日(土)全国ロードショー
公式サイト:http://kakekomi-movie.jp
【監督・脚本】原田眞人
【原案】井上ひさし「東慶寺花だより」(文春文庫刊)
【出演】大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名、キムラ緑子、木場勝己、神野三鈴、武田真治、北村有起哉、橋本じゅん、山崎一、麿赤兒、中村嘉葎雄、樹木希林、堤真一、山﨑努
(2015/日本/143分)

『日本のいちばん長い日』
8月8日(土)ロードショー
公式サイト:http://nihon-ichi.jp
【監督・脚本】原田眞人
【原作】半藤一利「日本のいちばん長い日 決定版」(文庫刊)
【出演】役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山﨑努
(2015/日本)

©2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会
©2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

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