今こそ観ておくべき映画
文子は関東大震災の直後、治安警察法に基づく「予防検束」として、夫の朴烈と検挙された。この予審中、朴が「大正天皇と坊ちゃん(皇太子)の殺害を計画していた」とほのめかし、文子も天皇制否定を論じたことにより、2人は具体的な証拠はないものの、思想を… 続きを読む
文子は関東大震災の直後、治安警察法に基づく「予防検束」として、夫の朴烈と検挙された。この予審中、朴が「大正天皇と坊ちゃん(皇太子)の殺害を計画していた」とほのめかし、文子も天皇制否定を論じたことにより、2人は具体的な証拠はないものの、思想を理由に大逆罪で起訴され、ともに死刑判決を受けた。 その後、「天皇の慈悲」として無期懲役に減刑されたが、これは死刑判決への反発の声が朝鮮半島を中心に根強かったことから、事態を悪化させないことが背景にあるとされる。 映画は減刑後、宇都宮刑務所栃木支所に送られた文子を中心に描いているが、文子の生き方は次第に看守を含めて共感を広げていく。 映画が進むにつれて、思想的には文子の方が生き生きとしているように見え、逆に刑務所長たちが思想的な「監獄」に捉えられているように見えてくる。実際、その後に日本は戦争への歩みを加速し、破滅していくことから、ある意味では文子による「警告」だったとも言える。 文子が自らの生い立ちを踏まえ、子どもに語り掛けるシーンが胸を突く。決して「過去」の話ではなく、このまま行くと「未来」になりかねないと警鐘を鳴らしている。 菜葉菜さんや小林且弥さんの演技が圧巻。さらに吉行和子さんの遺作でもある映画。見て後悔する人はいないだろう。