野生
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
家では、病気の母親と赤ん坊の世話、父親からの暴力、激貧の暮らし。学校では、生徒からも教師からもいじめられ。その上、森番にレイプされ。周囲の大人の女性さえも彼女に冷たくあたる。ムシェットの人生には、次々と孤独が積み重ねられていく。 だけども、不思議とムシェットの眼差しは強い。「なにさ!」と父親を睨みつけ、気に食わないクラスメートには泥を投げ、嫌なことしか言わない女性の部屋では絨毯に泥を擦り付ける。ギリギリのところで生きてるのに、無自覚に強いのだ。しかも彼女はありがとうって絶対言わない。コーヒーやパンをもらってもただ黙々と食べるだけ。まるで野生だ。飼い慣らされるのを拒んでいるかのよう。(そして楽しむときは楽しんでる。ゴーカートのシーンとか。ぐわんぐわんぶつかり振り回される。弄ばれてズタボロにされる彼女の人生を象徴しているようであり、それを楽しんでいる強さも描かれていて、パラドキシカルなシーン。) そういえば、最期もゴロゴロ、ドサっと。 アニエス・ヴァルダの『冬の旅』の女放浪者モナの生き様にも、In to the Wildにも似ているなぁと思う。 この極限まで抑制された撮り方で、安っぽいお涙頂戴を避け、逆に彼女の<あっぱれ>な生き様を浮き彫りにする、私は好きだな。