少し難しいが深いストーリー
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
展開が速かったり説明が少なかったりすることから少し難しく分かりにくくはありますが、よく考察するととても深い映画です。観終わった感覚としては邦題は若干的外れな気がします。この映画のテーマはロニートとエスティの恋愛というよりは自由や選択で、二人の関係はその象徴と言った方が正しいかと思います。 二人にはそれぞれの求めるもの、それぞれの自由があり、その違いがラストシーンにつながります。ロニートはコミュニティーを飛び出し違う世界で生きることを選択しました。しかしエスティに同じことができたかと言うとそれは違います。エスティにとっては宗教は簡単に捨てられるようなものではなく、ロニートへの愛と同様に彼女の望みの一つです。エスティは一見保守的でか弱いように見えますが、最後に自分の信念を貫きコミュニティーの中での自由を決意したように芯の強い女性です。エスティが誰よりも自由を追い求めていることは、自らロニートを呼んだことや彼女からロニートにキスをしたことから分かります。コミュニティーの中で子供に自由を与えて育てる、つまりコミュニティーを変えていくことを決意したエスティは実は誰よりも強い女性なのではないでしょうか。 この映画の主役はエスティで、テーマはエスティの葛藤を通して見る自由な選択です。映画の初めと終わりではロニートとエスティの状況は変わっていないようにも見えます。確かにロニートにはほとんど変化はありませんが、エスティの心境には大きな違いがあります。映画の初めのエスティはコミュニティーに縛られたまま仕方がなく留まって生きています。真っ先に自由に向かって飛び出したロニートに置いていかれただけです。しかしロニートが帰ってきて選択のチャンスを得ます。ロニートはエスティを街に連れ出し何の縛りもない彼女の生きる世界を見せ、エスティも今までの世界から解放され至福の時を過ごします。しかし、彼女は葛藤の末今度は自らの意志で自信を持ってコミュニティーに残ることを選択します。ドヴィッドもエスティによって本当に人間が求めるべきものは何か、自由とは何かを理解します。 テーマを際立たせるためのロニートとエスティの過去のエピソードなどの省略がこの映画を難しくしている節はありますが、同時にただのありふれたラブストーリーや宗教批判とは一線を画した唯一無二の映画を形作っています。もちろん女優2人による映像の美しさは格別です。理解を深めるためにももう一度観たいと思います。