途方もない才能に恵まれ、スターになるべく生まれたセルゲイ・ポルーニン。しかし彼はその運命を受け入れなかった。バレエ界のしきたり、天才ゆえの重圧、家族の関係。スターダムから自滅の淵に立つ中、彼が再び注目を集めたのはグラミー賞にもノミネートされたホージアのヒット曲『Take Me To Church』のMVだった。 写真家のデヴィッド・ラシャペルが監督し、ポルーニンが踊ったこのビデオはYouTubeで1800万回以上再生され、ポ ルーニンを知らなかった人々をも熱狂の渦に巻き込んだ。<ヌレエフの再来>と謳われる類い稀なる才能と、それを持て余しさまよう心。本人や家族、関係者のインタビューから見えてくる彼の本当の姿とは...…。
バレエは習ったことも観たこともない。恥ずかしながら、セルゲイ・ポルーニンも初めて知った。だけど、こんなに魅きつけられた映画、何年振りだろう。映画を観る前にYouTubeでtake me to church の動画を観た。彼の存在感に圧倒され… 続きを読む
バレエは習ったことも観たこともない。恥ずかしながら、セルゲイ・ポルーニンも初めて知った。だけど、こんなに魅きつけられた映画、何年振りだろう。映画を観る前にYouTubeでtake me to church の動画を観た。彼の存在感に圧倒された。どうにもならないほどに魅きつけられた。どうしてかわからなかった。でもその理由がこの映画を観てわかってしまった。絞りあげられるような、震えるような、身動きできなくなるような、そんな85分。
美しい顔と、獣のようにしなやかな肉体、繊細な心を持ちながら、全身タトゥーと、ドラッグ漬けとなりバレエ界の異端児と言われた彼の素顔は思っていたものとは全く違い、純粋そのものの、優しい青年だった。
バレエ界を抜け出した彼が、親友の振り付けで踊る「Take Me To Church」の圧巻のダンスシーン。
本当に神様に選ばれし者が魂を込めて表現するものを目の当たりにすると理由もわからず涙が止まらなくなることを知った。
目標を見失い、踊る意味を見失い、それでも踊らなければ生きていけない「神様の贈り物」の肉体を持った彼の人生が枠を外れても心安らかに生きていけるようになればと祈るような気持ちになっていた。
バレエに興味がない人でも観て欲しい。天才の苦悩、若くして目標を失うことの喪失感と残りの長い人生との向き合い方を考えさせられる内容と共に、ホームビデオとして残っている映像がとてもドラマティックで、まるでこのドキュメンタリー映画が作られることが予言されてきたかのような仕上がり。
音楽の使い方も他のバレエドキュメンタリーとは異なって秀逸でした。